わたしの意見-
水野 創

5.23ショック

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」5月24日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 23日の株式、長期金利は大荒れだった。(東証株価指数前日比▲87.69、長期金利同▲0.05%)

 アベノミクス支持・反対双方から、「海外主因の一時的調整。実体経済は堅調で慌てる必要はない」、「大胆緩和、資産バブル頼みのアベノミスクの脆さ。方向調整が必要」とそれぞれの見方が示されている。

 「量的・質的金融緩和」開始後の動きでは、長期金利が先行して不安定かつ上昇傾向となり、昨日は一時1%まで上昇した。株式市場の動きにも、海外要因と共になにがしか影響しているだろう。

 こうした動きについて、私は以下のように感じた。

 ①政策手段、対話力への懸念
前日の22日には日銀政策決定会合があったが、4月4日「『量的・質的金融緩和』の導入について」の「2」を駆使した説明(長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍、など)や、26日「経済・物価情勢の展望」の「2015年消費者物価指数見通し1.9%」に比べ、新材料は少なかった。記者会見で長期金利についての数多くの質問に黒田総裁は丁寧かつ率直に答えていたが、「長期金利が跳ねることは十分防止できる」と言う定性的説明で、新たな数字、手段等は示されなかった。長期金利の先行きを心配し始めている投資家の気持ちをほぐし、国債を買う気にさせる材料にはならなかったと思う。

 ②第2、第3の矢失速への懸念
成長戦略や財政再建に関する動きを見ても、参議院選挙が近づくにつれ、負担を伴う政策を先送りする議論が目立ち始めている。また、政権の関心事項も、経済から外交、憲法改正とここに来て拡大しており、新たな摩擦を引き起こしている。デフレ脱却の推進力・速度が落ちていると見られているのではないかと思う。先送りや関心の低下を許さないと言う市場の強い意思が示されたとも評価できる。

 もともと、デフレ脱却に向けた壮大な挑戦は始まったばかりである。今後も事ある毎に市場の圧力を受けると思うが、我々はそれを克服して課題を解決していく知恵と力を持っていると信じている。

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