わたしの意見-
水野 創

今後10年の新しい経済の姿―中長期の経済財政に関する試算(内閣府)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」8月15日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 先週から今週にかけてアベノミクスの今後にかかわる重要な2つの発表があった。中期財政計画(8日)と4-6月実質GDP統計(一次速報。12日)である。

 このうち後者は前期比年率+2.6%と概ね2013年度見通し(+2.8%)並みの成長となった。直前の民間予想(同+3.4%)は下回ったものの、その主因は一次速報段階では基礎データが揃っていない在庫の減少にあり、成長の勢いについて現時点で過剰反応する必要はないと思う。

 一方、中期財政計画では、経済再生ケースとして国・地方の基礎的財政収支のGDP比赤字幅が今後10年の緩やかに縮小していく姿が示された。経常収支の黒字幅も拡大し、アベノミクス開始前に日本経済研究センターが発表したデフレ継続下の財政・経常収支「双子の赤字」懸念に比べ、成長戦略やデフレ脱却の効果が発揮された姿になっている。

 もっとも、今回示された経済指標全体をみると、今後10年間で名目GDP増と物価上昇だけでなく(各+41%、+25%)、内閣府の経済モデルにより算出された長期金利が2013年度の1.1%から2023年度には5.0%まで上昇しているのに驚かされた。

 住宅ローンを含め長期の変動金利で資金調達することのリスクが示された形だが、今回の試算で経済全体のバランスがどこまで検討されているのか心配にもなった。

 次の機会には安心できる見通しを示してほしい。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。