わたしの意見-
水野 創

ベアと企業業績

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」3月14日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 3月12日の春闘集中回答日に、大手企業は、4月以降の個人消費との関係で関心の高いベースアップについて前向きの対応を示した。

 1月下旬以降続いている海外発の市場の振れ(表1)、1月経常収支の大幅赤字、TPP交渉の遅れ等先行きに対する懸念材料がある中で、政府要請があるとはいえ、大手企業の企業経営者が人件費の恒久的な引き上げを決断できた背景には、この一年の収益基盤の回復と先行きに対する自信があると改めて感じた。

 この点を確認するために、3月3日に公表された法人企業統計季報の経常利益・売上高経常利益率をみてみよう(表2)。

 両指標とも昨年10~12月期まで回復しているが、内訳を見ると、特に資本金10億円以上の企業の回復が著しいことがわかる。こうした企業では、先行きについても、先進国経済の回復、100円台の円高修正の定着、5.5兆円の追加経済対策等から収益基盤が崩れるリスクは少ないと見込んでいると思われる。4月1日公表予定の日銀短観の2014年度計画では、設備投資計画と併せそうした結果が確認されるだろう。

 この間、中小企業は、回復してきているとはいえ大企業とは利益水準に差があり、また、消費税引き上げ後の反動が出る4月以降に賃金引上げ交渉が本格化することから、自ずと大企業とは違った結果となると思う。人手不足の激しい建設等一部業種を除けば、ベースアップではなく一時金で対応する企業が多いのではないだろうか。

 いずれにしても、引き上げ直前の現時点の景気の瞬間風速は各種予測が示すとおり相当なスピードになっている(例えば、ESP3月調査では1~3月の前期比年率は4%台)。4月以降の個人消費の減速は避けられない。個人部門以外でこれを補い、短期間で回復基調を確認できることを期待したい。

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