わたしの意見-
水野 創

消費税引き上げ直前の経済指標と空気

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」3月20日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 4月1日の消費税引き上げを直前に控え、新興国経済の弱さやウクライナ情勢の深刻化等海外発の市場の振れ(図表1)、3月10日発表の10-12月実質GDP統計の下方修正(季節調整済み年率、1次速報+1.0%→+0.7%)に代表される統計の弱さなどから、ここに来て昨年末以降の期待の高まりに水が差されているように感じる。

 お目にかかる経営者の皆さまからも、「1~3月は駆け込み需要でもっとよいかと思ったがそれほどでもなかった」、「価格競争は引き続き厳しい」といったお話を伺うことがある。

 ここに来て年初と比べ勢いが弱っていることが話題になるのは、海外情勢、経済指標による過去の実績の下方修正だけでなく、3月に入り駆け込み需要のピークを既に越しつつある部門が生じているためと思う。

 例えば、鉱工業指数1月確報(季節調整済み前月比、14日発表)は駆け込み需要対応で生産+3.8%、出荷+5.1%、在庫▲0.9%、在庫率▲5.4%となったが、生産は2月の予測指数(+1.3%)まで増加したあと、3月の予測指数は▲3.2%と減少に転じている(図表2)。家電量販店の店頭等消費の現場に先駆け、生産の現場では消費税引き上げ前のピークを既に超えている。より川上の部門を含むこうした部門の経営者の皆さまは、既に駆け込みの反動や需給も引き緩みを感じ、発表される経済指標の弱さとあいまって慎重な見方になっているように感じた。

 もっとも、この間の駆け込みによる需要の先食いや、在庫水準は図表2で見る限り極端に大きいわけでなく、一方で設備投資については、企業収益が改善する下で稼働率が上昇し、設備判断DIも過剰の水準が低下していることから、今後増加が期待される(図表3)。

 今後の海外要因は気がかりだが、追加経済対策や首都圏では2020年東京オリンピック・パラリンピック関連投資の本格化もあり需要が腰折れすることは引き続き考えにくい。反動減の期間は自ずと限定されることが期待できる。この間に企業マインドが過度に萎縮しないよう期待したい。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。