わたしの意見-
水野 創

マネーストック統計に見るデフレ脱却

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」6月19日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 4月以降、消費者物価の前年比上昇率が加速している。消費税抜きで前年比2%を達成できるかはともかく、アベノミクス効果による需給改善や来年の消費税再引き上げを展望すれば、当分マイナスに戻ることはないと考えるのが普通だろう。

 さて、マネーストック統計は、世の中に出回っているお金の量を示す統計で、現金通貨(日銀券<お札>、補助貨<コイン>)、預金通貨(当座預金、普通預金)、準通貨(定期預金等)など資金決済での使いやすさ毎の内訳と合計値(M1、M2など)が公表されている。

 この統計は、取引金額、金利、物価など経済状況やカード・電子マネーなど決済方法の変化により様々な動きをする(取引金額が増えればマネーストックも増えるなど)。そして今回の話題に即して言えば、現金通貨(持っていても金利がつかない)、預金通貨(金利がつかないか低い)、準通貨(現在は金利が低い)の保有者はインフレ時には目減りを避けるために必要最小限の保有に止めたい、他の資産に変えておきたいと思うだろう。逆にデフレのときは現金通貨で持っていれば元本を減らすリスクなく、後日より多くのものを購入できることになる。

 そうした目で既に5月分まで公表されているマネーストック統計を見ると、前年比は昨年末まで高まった後、今年に入り区々の動きとなり4月以降は伸びを低めている。また、現金通貨、預金通貨を名目GDPで割った比率もこれまでの上昇トレンドが2014年1~3月期にはやや変化しているように見える。

 国民は、個人も企業も4月以降の物価上昇の強さや持続性を肌で感じ、迅速に、これまでとは違った資産運用行動を取り始めているのではないだろうか。設備投資や住宅購入の前倒しなどマネーストック以外の行動にどこまで広がって行くか注目したい。

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