わたしの意見-
水野 創
振れは大きいが想定通り―4~6月GDP統計
水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」8月15日号に掲載)
水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]
4~6月のGDP速報(一次)が公表された(13日)。代表的な指標である「実質GDP前期比年率(季節調整済み)」は▲6.8%、1~3月の+6.1%を上回る減少幅となった。
消費税引き上げ前の駆け込みの反動とは言え振れが大きい。基調を確認するため、今回は、実質GDPと名目GDPの前年比(原系列。季節調整を行っていない)を取り上げたい。
前期比年率(季節調整済み)が、前期との変化を強調して示すのに対し、前年比では1年間の変化の積み重ねを把握できる。また、実質GDPは生産・雇用や稼働率と関連が強いが、物価変動も含む名目GDPは所得や売上、収益の実感と近い。因みに報道でも雇用者報酬については名目の前年比+1.3%が使われている。
(1)実質GDP前年比は▲0.1%で、前期比大幅減少とは言えほぼ前年の水準は維持している。内訳をみると、所得の伸びが物価上昇に追いつかない個人関連の項目は減少しているが、好業績の民間設備投資や公的需要は増加を続けている。
(2)名目GDPは前年比+1.9%で物価上昇分だけ前年を上回っている。個人消費は所得の増加もあって、駆け込み後の反動はあっても名目では前年並みの支出を維持しており、実質では物価上昇分だけ減少したかたちになる。
(3)輸出入は実質、名目とも増加しているが、超円高修正の一巡から名目の増加幅は急速に縮小している。これは輸出の超円高修正による収益押上げ効果の低下を意味し、今後は輸出数量の動向がより大きな意味を持つことになる。
このように前年比をあわせて見ると、一年半のアベノミクスの効果浸透で、消費税引き上げ直後の4~6月は概ね想定通りの状況であったと考えられる。
もともとGDP統計は振れが大きく、今後は、9月発表の2次速報を経てどのような姿に収束していくか、また、現在進行中の7~9月が台風の影響や海外政治リスクを含めどの程度の回復力を示すか注目していきたい。
アベノミクスは「期待」に働きかけた壮大な実験である。基調判断に懸念が生じたときには、「期待」の下振れを防ぐ対策を適切に行うことが重要だと思う。
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