わたしの意見-
水野 創

当面は厳しい、値上げへの再挑戦

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」1月15日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 

 年初にかけて、東大日次物価指数(全国のスーパー300店舗のPOSデータにより作成。消費税抜き、前年比。速報性が高い)が大きく上下に振れた。

 円安によるコスト上昇に対応するため1月以降の値上げを発表している商品が実際に売り場に並んだのだろう。同指数が跳ね上がったのは消費税引き上げに合わせて値上げを試す動きが広がった昨年4月以来のことだ。

 一方、売上高指数は物価指数が上昇した年初に大幅なマイナスになった後、物価指数の反転と共に持ち直している。

 消費を巡る環境は、①原油価格の低下を主因に消費者物価指数の上昇幅が縮小し、②昨秋来の円安・株高の資産効果、企業業績を反映した賞与・雇用者増加が進むなど昨年春から夏ころに比べ改善している。

 この点、今が値上げへの再挑戦の好機とも言えるが、一方で、消費の2極化も進んでいる。差別化された商品・サービスの値上げが浸透し、売り上げが回復しても、競合商品があり、店舗間の競争も厳しいスーパーに並ぶ商品について消費者の目はむしろ厳しさを増している。ポイントカードなどを利用したお客様囲い込みの販売促進策が、「買い急ぐ必要はない」、「待っていれば安売りがあるだろう」というデフレ期の購買姿勢に戻してしまっているように見える。

 追加経済対策(地域商品券の発行など)、消費税引き上げの影響一巡(実質賃金の上昇)など消費環境の一層の改善が期待できるのはもう少し先になる。それまでの間は消費者と売り手の厳しい攻防が続くだろう。

 春以降、消費全般の回復が実感できるよう期待したい。

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