わたしの意見-
水野 創

今年度の消費に弾みをつける消費性向の回復

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2015年5月28日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 2015年度の消費は、所得(雇用者所得:賃金×雇用者)の増加、原油価格低下・消費税引き上げの影響一巡による物価の落ち着きにより回復するはずだ。第一四半期(4~6月)が残り1ヶ月となったが出だしの状況はどうだろう。

 実質GDPの消費は20日に1~3月分が発表になったばかりだが(表1)、4月の景気ウォッチャー調査(13日発表)では家計関連が現状・先行きとも改善し(各2.3、0.8ポイント)、5月のGWの結果も良好だった。その後は夏日到来で季節商品の出足も好く、これらは期待通りの展開といえる。

  もっとも、スーパー・消費者の値上げをめぐる攻防は一進一退で決着もついていないし、量販店・専門店で閉店の動きが見られるなど一様ではない。

  先行き消費回復に弾みがつくためには、所得の増加に加え、消費税引き上げ前の駆け込み後低下したままの消費性向が元の上方トレンドを回復することが重要だ。GDPベースの消費性向(民間最終消費支出÷雇用者報酬)は長期的には上昇傾向にあるが(表2)、最近の動きを見ると、消費税引き上げ前に一時的に高まった後、低めの状況が続いている(家計調査でも同様の動き)。その背景として、①物価の上昇に所得の増加が追いつかない厳しい状況の下で支出を抑制している(物価は上昇しても消費者は所得の増加以上には消費を増やさなかった)、②将来への不安からむしろ貯蓄に励んでいる、といったことが考えられる。

  これらの要因は、4月以降、実質所得が前年比プラスに転じることで解消への一歩を踏み出し回復に弾みをつけるきっかけとなると思う。ただ、その後の上昇度合いは若者・高齢者世代それぞれに①先行きの所得増加期待の定着、②社会保障の将来展望も開けてくることに掛かっており、いま少し時間を要することが考慮点だ。

  それにしても昨年は天候に祟られたが、本年はこのまま天候が手助けをしてくれることを願いたい。

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