わたしの意見-
水野 創

引き続き冴えない経済指標と先行き見通し

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2015年10月15日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 冴えない経済指標が続き(表1)、政府も「このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」と、先月の日銀に続き判断を引き下げた(14日、月例経済報告)。エコノミストの2015年度見通しも下方修正が続いている(表2)。

  

 マイナス成長となった2014年度の再現にならないか心配にもなる。今回は、2014年度と現状の比較をし、先行きのリスクを考えてみたい。

 2014年度は、消費税引き上げ前の駆け込み需要の反動の後、夏場以降も家計部門及び関連業界に引き上げの影響が残り、天候不順も加わって失速した。この間、企業部門は業種別、規模別、地域別の差が大きく、期待された家計部門の落ち込みのカバーは出来なかった。

 2015年度は、家計部門は消費税引き上げの物価への影響一巡や原油価格の低下から実質所得がプラスに転じており、食料品などスーパーでの値上げが容認されるようになってきた。もっとも、雇用者報酬の伸びは勢いを欠いており、回復力は期待を下回っている。また、企業部門には、業種別、規模別、地域別の差が残り、これまで好循環の起点となっていた大企業製造業も海外リスクの高まりから、マインドが慎重になっている。なお、海外旅行者の爆買いや株高基調による資産効果は続いているが、全体を盛り上げるほどの効果ではない。

 先行き、失速を避けるためのポイントは以下の諸点だと思う。

 ①家計部門については、雇用者報酬(雇用者数×賃金)が緩やかながらも引き続き増加し、原油価格低下の影響一巡などにより今後想定される物価上昇を吸収すること。

 ②企業部門では、個人消費関連業種を起点に、昨年度とは逆の好循環が生まれること。

 ③大企業製造業については、設備投資の大幅な見直しにはつながらないこと。なお、従来の経験からは、海外リスクの高まりがリーマンショッククラスにならなければ大丈夫とみられる。

 政策当局には、判断を引き下げた以上、それに見合う具体的な政策の早期実施を期待したい。

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