わたしの意見-
水野 創

米国金融政策変更まではこう着状態

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2015年11月27日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 政府が「一億総活躍社会の実現」に向けた緊急対策を決定した(26日、一億総活躍国民会議)。

 「GDP600兆円」の強い経済、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」の実現を目指し多くの取り組みが盛り込まれている。

 対策の前提となる足元の経済については冴えない指標の発表が続いている。景気ウォッチャー調査や消費動向調査は横ばい圏内、民間エコノミストの経済見通しはなかなか下げ止まらない。

 

 東大日次物価指数、日次売上高指数もこのところ勢いを欠いている。改めて消費者の値上げ商品の買い控え、売り上げ減に対応した値下げ競争も一部で始まっているようだ。

 一方、経営者の皆様からは、「経済指標はよくないが、夏場までに比べ現状はややよくなっている」との感触もいろいろな機会に伺っており、これまで同様、回復状況に差があるのが実態だろう。

 そして、いずれにしても景気に年初の期待ほどの勢いがつかず、時期によりその主な要因も変化していると思う。おそらく現時点で多くの人のマインドを慎重にしているのは、これから「GDP600兆円」の強い経済実現までの次の一歩が見えないということだと思う。

 これまでアベノミクスを推進してきたのは為替円安、株高による企業収益改善、資産効果と公的需要であるが、これらが今後もこれまで通りの推進力を持つことは期待しにくくなっている。また、提示された成長戦略はいずれにしても時間がかかり、当座のマインド改善の決め手にはならない。

 海外では、米国金利引き上げがいよいよ現実的になり、引き上げ後の市場の動きを確認しないと積極的には動きにくい。米国の政策決定を見極めるまではすっきりしない状態が続くだろう。

 来年の設備投資や雇用者報酬についていろいろ言われているが、先行きへの道筋が見えてこないと今年と同様結局言いっぱなしになると思う。

 こうした中で、期待はイノベーションによる生産性の向上だと思う。具体的な取り組み事例は数多く始まっており、それらが実を結ぶよう引き続き応援して行きたい。

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