わたしの意見-
水野 創

2016年度入り後も振れは大きい―政策決定までに時間

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2016年3月24日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 年度末に向けて市場における我が国の割負け感はなくならない。

 特に外国為替市場は、米国の金融政策への見方の変化や地政学リスクの一段の高まりから1ドル110円台後半に戻らないのが厳しい。それに比べ株式市場は「国際金融経済分析会合」(16,17,22日)における増税延期、財政出動を促す発言などを織り込んでいくらかましだが、期待される水準からはまだ1000円以上乖離がある。

 さらに今月は、日銀、政府が景気判断を引き下げた(各15日、23日)。方向感は間違いないが、実態は、地域別、業種別、規模別の差は一段と拡大している。強いのは、東京(一極集中)、インバウンド関連、マイナス金利で好調な不動産など。逆に冴えないのは、一般生活用品(汎用品)。ロボット・人工知能の急展開による省人化効果で労働需給も一部の職種を除き見かけほど逼迫していないのではないかと感じている。

 こうなれば次の経済対策の決定は早い方がよいが、実際には、国会での2016年度予算審議、2015年度補正予算実行、マイナス金利の評価、G7、国政選挙をにらみ政権にとって最も効果的な時期に行われるだろう。

 また、追加の対策が選挙前に行われることを考えれば、既得権の見直しを伴う規制緩和・成長戦略の実行は期待できない。アベノミクスの元の「3本の矢」を全て使うことが求められる中で、今回も第1、2の矢にとどまろう。

 これらを考えると、年度末までの市場の環境変化は、口先介入があっても限定的で、決定まで時間がかかる分、景気の振幅も大きくなると思う。状況によっては、これまで安定して高かった政権の支持率にも影響するのではないか。

 数々の危機を乗り越えてこられた経営者の皆様の力に期待したい。

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