わたしの意見-
水野 創

収入が増えても消費態度は慎重―下がる消費性向―

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2016年5月19日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 2016年1~3月期のGDP統計が公表され、2015年度の経済の姿が確認された(18日、表1)。

 目立つのは個人消費の減少が続いていること。雇用者報酬は増加しているのに、消費性向が低下している。収入が増えても支出にまわさず貯蓄している。

 これまで慎重なのは年金生活者、所得の低い人たちと思い、そうした説明もしてきたが、家計調査(2015年速報)で見ると、世代、収入を問わずほとんどの階層で消費性向が低下している(表2。低下していないのは収入でみた第Ⅱ階級 <5階級のうち下から2番目。年収439万円~576万円>だけ)。

 子育て世代から高齢者まですべての世代が将来に備えて身構えている。したがって緊張をほぐすには子育て支援、雇用の確保、医療・年金・福祉から、それらの背景となる財政の長期見通しなど幅広い安心感の広がりが必要だと思う。消費税率引き上げの延期やマイナス金利の深堀を含むさらなる金融緩和の強化だけでは解決できない。

 地域では、地方創生の動きの中で、地域包括ケアシステム、日本版CCRCなどにより将来の地域のあり方の全体像を示し、子育て世代から高齢者まで各層の、安心・安全と仕事・雇用の創出を図ることが必要だろう。

 この間、消費慎重化の企業経営への影響は、値下げ競争が激化しているスーパーのセール品、値上げを撤回したユニクロ、毎年値上げを実施している東京ディズニーリゾートなどさまざまである。価格以外で勝負するためのイノベーションを進めたい。

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