わたしの意見-
水野 創

短観、さくらレポート:景気の現状・先行きの語り方

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2016年10月20日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 今月に入り、日銀の9月短観(3日)、地域経済報告(さくらレポート。17日)が公表された。

 全体としては緩やかな回復を続けているが、業況判断DIは水準を切り下げており、幾分縮小したものの地域別、業種別、規模別の差も引き続き大きい。(表1、2)

 景気の現状・先行きを語るとき、評価基準をどうとるかによって表現は大きく変わる。

 ①アベノミクス開始前の超円高ピーク期(2012年末)との比較→輸出関連大企業製造業を中心に全体に大きく改善している。

 ②消費税引き上げ前の駆け込みピーク時(2013年末)との比較→個人消費関連の影響が長期化。雇用は増加しているが、パート比率も高く賃金の伸びは期待ほどではない。消費性向が下がったまま。

 ③中国経済の減速の影響→輸出入を通じ世界経済に影響。特に鉄鋼は日本への影響も大きい。

 ④米国の金利引き上げを契機とした本年初来の国際金融市場の激動→円高・株安の急激な進行でアベノミクスの好循環が崩れる。政治・地政学リスクによる先行き不透明感も加わってマインドは慎重化。企業は減益、資産効果の剥落から高額消費にも影。

 ⑤2%の物価目標→日銀はあきらめていないが、金融政策の副作用が心配。

 ⑥首都圏経済→東京オリンピック・パラリンピック招致決定後、首都圏への一極集中が強まっているうえ、多くのプロジェクトが進行しており好調持続。

 政策当局、政治家、学者などいろいろな利害関係者が、それぞれの文脈の中で上記以外の見方も含めて使い分けている。注意して聞くようにしたい。


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