わたしの意見-
水野 創

米国大統領選、トランプ氏勝利 荒れる市場、逆風の日本経済、心配な国際政治

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2016年11月10日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 8日の米国大統領選挙は、6月の英国EU離脱国民投票に続き、事前予想を覆す結果となった。

その影響を、市況、経済、国際政治について考えてみた。

 市場は荒れる。当面、政策の先行きが不透明な分、投機資金にとっては格好の稼ぎ時になるだ ろう。ただ、市場は年初来、米国の金利引き上げ、英国国民投票から日本のマイナス金利まで数多くの大きな要因で大きく変動しており、他の材料と重ならなければ、変動幅がこれまでの流れを大きく逸脱するほどの材料にはならないと思う。

 経済への影響は、日本にとって目先良いことはない。格差の拡大に乗じたTPP離脱、報復関税など保護的な主張で広範な支持を集めた。米国向け輸出への直接の影響のほか、日本の規制緩和・成長戦略の一層の遅れにもつながりかねない。主張の実現までにはそれなりの交渉、時間を要すると思われるので、その間に、英国のような影響軽減に向けた知恵を発揮したい。

 更に心配なのは、内向き志向の強まりによる国際的な力のバランスの変化だ。南シナ海などで中国が既成事実を積み重ねている現状で、一瞬でも力の空白が生じれば、既成事実化が一挙に進む可能性が強い。日本にとっての急激な事態悪化も懸念される。そうした事態に陥らないよう、「民主主義、法の支配、自由、人権、人道」といった価値観の共有と連携をできるだけ早く世界に向け明らかにする必要があると思う。

 今年は、先進国の英国、米国で、国内の格差の拡大、不満を既存の政治的枠組みが吸収しきれず、予想外の投票結果となる事態が続いた。日本の2009年の政権交代は国民の期待に応えられず短命に終わったが、英米の新しい枠組みが、それぞれの格差・不満を前向きの力に変化させ、世界経済の発展に寄与するよう期待したい。


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