わたしの意見-
水野 創

人手不足の割に賃金は上がってこなかったが  

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2017年4月28日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 人手不足の声が高まるなかでも賃金はこれまで小幅な伸びにとどまってきた。

 リーマンショックを経たこの10年で、労働者合計の雇用者数は14%増加しピーク水準にあるが、賃金は逆に5%低下している。アベノミクス開始前(2012年)比でも微増にとどまっている。

 その一因は相対的に賃金の低いパートの構成比上昇にあるが、原因はそれだけではない。

 すなわち、就労形態別に賃金指数を見ると、アベノミクス開始後、一般労働者、パートともに賃金は増加しているが(2012年比、各+3%、+1%)、その水準はまだリーマンショック前まで回復するかどうか(2006年比、各▲0%、+2%)であり、雇用者数の増加ぶりとは差がある。なおその差はパートで特に顕著である(2006年比、各+6%、+38%)。

 また、就労形態別に、賃金の増減の振れの大きさは差がある。賞与等で企業業績がより大きく反映される一般労働者の振れが大きく、これまで供給が豊富で、税制による働き方の制約もあったパートの振れが小さい。

 今後2017、2018年は、パートを含む労働需給の一段の逼迫、世界経済の回復、市場の安定による企業経営者のマインド・企業収益改善、消費者物価上昇による賃上げの必然性の高まりなど、それぞれ改善が予想されている。賃金はこれまでに比べ伸びを高める可能性が強い。

 経営者にとってはコスト増加要因だが、値上げ浸透のほか、サービス内容の見直し、合理化投資等の契機となりうる。そして、パートを含む今後の「働き方改革」の帰趨によっては、雇用・賃金体系全体、分配のあり方の見直しに踏み込む可能性も考えておきたい。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。