わたしの意見-
水野 創

人口減少で成長率は?秋田県の事例  

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2017年5月18日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 人口減少社会の成長については、①「需要・生産力の落ち込みから成長は望めない」、②「一人当たり生産性が高まり成長は維持できる」の両論がある。

 秋田県の事例で見てみよう。秋田県は2000年以降4回の国勢調査でいずれも全国1の人口減少率になっている。

 2005年から2015年までの10年間で、人口は1割減少、一人当たり県民所得は5%強増加したが、県内総生産は物価の変動を含む名目で7%弱の低下、物価の変動を除き生産・雇用・稼働率の実感に近い実質で2%強の低下となっている。

 一人当たり生産性が上がっても、人口減少幅が大きければカバーしきれない。

 収益・所得・税収等の実感に近い名目値は、物価の状況によっても大きく左右される。物価下落時には名目値低下の影響を人口減少以上に大きく感じることになる。

 物価とともにリーマンショックなど経済変動にも大きく左右される。

 秋田県の結果を、人口増加を維持している千葉県と比較してみると(千葉県は2015年の成長率が公表されていないため、2004年から2014年で比較)、千葉県は人口、名目・実質成長率の3指標はプラスになっているが、一人当たり県民所得は、リーマンショック後の超円高に加え、おそらく東日本大震災の影響もあって10年前の水準まで回復していない。

 このように人口減少の影響は相対的なものとして考える必要がある。イノベーションにより一人当たりの生産性を高めるのは当然として、人口減少幅を正確に評価する、世界経済全体の成長を取り込む、デフレ社会を繰り返さないといった組み合わせが求められよう。

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