わたしの意見-
水野 創

消費税引き上げ直前に参議院選挙のある2019年経済は  

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2017年11月2日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日銀は10月31日の政策決定会合で緩和継続を決定した。

 同時に発表された2019年度までの成長率、物価見通しや衆議院選挙結果を見ると、今後少なくとも2019年までは緩和政策が続き、次の政策変更は緩和の強化の方向になるように思われる。

 すなわち、第一に、今回発表された2019年度の姿は、実質GDP成長率が2018年度の半分に減速する。消費者物価は、高めの成長を維持する2018年度でも前年度比+1.4%と目標の2%には達しない。2019年度の物価は消費税率引き上げの影響を織り込んで前年度比+2.3%(引き上げの影響を除くと同+1.8%)と2018年度に比べ大幅な上昇を見通している。民間エコノミストはより慎重な見方となっているが、何れにしても緩和を見直す要因にはならない。

 第二に、衆議院選挙の結果、安倍政権の継続が決まり、アベノミクスも継続されることになった。引き続き矢継ぎ早に施策がとられるだろうが、これまで通り財政バランス改善の優先順位は低いだろう。

 さらに、金融緩和政策の変更が視野に入った途端、金利上昇が始まり、各市場の混乱、国債利払い費用の増加などの経済財政政策運営上のリスクを増す。当面は政策変更の誘因はない。

 参議院選挙(19年7月頃)は消費税引き上げ前の駆け込み需要がある期間であり、その後の減速と物価高についてどこまで世の中が心配しているか、現時点では測りがたい。しかし、上記の諸点を考えれば、選挙までの政策変更は考えにくく、消費税率上昇後の駆け込み需要の反動と実質所得の低下、更にはオリパラ需要のピーク越え対応などを理由に、財政を中心とした経済対策が2019年度には行われる可能性の方が強いのではないだろうか。

 米国経済の予想より早いピーク越え、北朝鮮の核開発の進行なども、日本経済にとってはマイナス・リスク要因となり上記方向を強めるだろう。

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