わたしの意見-
水野 創

荒れる市場、政治日程・政治課題優先のツケ

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2018年3月9日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 2月上旬でいったん落ち着いたかに見えた市場が再び荒れている。株式市場の反発力は弱く、外国為替市場は円高ドル安と、米国の長期金利高とは整合性に欠く動きだ。

 そもそも2018年の株式市場は、1月から2月にかけての「昨年秋以降に急速に上げ過ぎた水準調整」を終えれば、世界全体の景気の着実な回復を反映した動きとなることが期待されていた。

 期待を裏切った原因は、世界各国の政治優先姿勢の強まりだと思う。

 2018年の政治の世界は、米国では中間選挙があり、わが国では憲法改正に向けた動きが本格化することは予想していた。しかし、実際の動きをみると、両国とも政権運営の足を引っ張る問題が後を絶たず、これに対抗する必要上、米国の「鉄鋼、アルミの輸入制限」、日本の「働き方改革法案」のうち裁量労働制に関する部分の削除など、思っていた以上に政治的効果を重視する政策を迫られている。

 おそらく、米国ではトランプ大統領のメディアへの露出増大を狙い、日本では憲法改正国民投票で昨年の都議会選のような風が吹くリスクを極力抑えたいとの思いがあるのだろう。

 朝鮮半島、中国、ロシアなどでも形は違うがそれぞれ政治が主要課題となっている。

 これらの動きが、すぐに現在の世界景気の回復基調を崩すことはないと思うが、少なくとも中期的に見て成長を抑える動きとなることは間違いない。今後の情勢次第では2019年以降に予想される今回景気回復のピーク時期を早めることも考えられる。

 米国の金利は今言われているほどは上がらず、日本はいろいろ言ってもいずれ出口政策に関する議論を封じることが出来ない可能性を最近の円高ドル安方向の振れは示しているような気がする。

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