わたしの意見-
水野 創

入職率、離職率で見る人手不足の大きさと対応

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2018年3月23日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 最近、経営者の皆様との意見交換で「人手不足」が話題になることが多い。

 先日実施した弊社の「働き方改革シンポジウム2018」(3月7日、東京会場)でも、「人手不足」は「長時間労働」とともに主要論点だった。入社後の育成の難しさ、負担の重さなどとともに、そもそもの採用の難しさ、退職者の多さが問題とされた。

 それでは、入社する人、せっかく入社しながら離職してしまう人は毎年どのくらいいるのだろうか。

 厚生労働省の「雇用動向調査」によると(表)、1年間に、一般労働者の入職率は11%(ほぼ9人に一人)、一方で、ほぼ同数が離職している。そして、パート労働者の両比率はさらに高く、入職率は29%、離職率は26%(ほぼ4人に一人)に達している。

 シンポジウムでは、採用について、女性、高齢者、外国人など採用対象範囲の拡大(必要な環境整備の投資を含む)、地元校との関係強化、専門業者の活用など、さまざまな対応が紹介されたが、上記調査結果をみると、コストをかけて採用、養成した人材の離職を防ぐことも極めて重要である。

 離職防止対策として紹介されたのは、①採用時の選考をしっかり行い、向いていない人は採用しない、②雇用条件を出来るだけ詳細に説明し、入社後の不満の発生を防ぐ、③指導者を明示する。指導に当たる時間が取れるよう仕事を見直す、④スマホや動画も活用して新入社員でも分かりやすいマニュアルを整備するなどだ。

 そして、これらすべての課題への対処として指摘されたのは、社長による定期的な社員面談の重要性だった。不満を聞き助言を与えるとともに、企業理念を直接伝えることで社員のモチベーションも向上する。状況により直接改善策を指示することもできる。

 今回のセミナーは、ワークショップ形式で参加者の皆様の負担も大きかったと思うが、従来の働き方改革の打ち手を越える幅広い視点で議論が広がり、得たものは多かったと評価している。

 シンポジウムの結果はいずれ取りまとめるマネジメントスクエア誌上(6月号)でも紹介させていただく予定である。それぞれの状況に応じ、参考にしていただければ幸いである。

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