わたしの意見-
水野 創

振り出しに戻るトランプ大統領

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2018年3月29日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 中間選挙を控え、トランプ大統領は振り出しに戻った感じだ。

 大統領の手法は、基本的に1対1。複数を相手にしない。不意打ち、あるいは、個別交渉に誘い込み、圧倒的な力の差を背景に勝利をもぎ取る商法で、ファミリー企業のオーナー経営者としての成功体験に基づいている。

 中間選挙を控え実績を上げる必要が強まり、国際関係、貿易で得意の手法をフルに活用している。議会、裁判所、市場などでは通用しなかったが、今回の中国、韓国外交では一定の成果をあげ、次は北朝鮮との勝負だ。

 4月に首脳会談を予定されている日本も当然視野に入っているだろうが、日本側は話題を政治に限定し経済に踏み込まない「副総理・副大統領に任せる」ことが重要だ。

 この間、市場は、大統領選挙後の興奮が冷める形で大きく反応している。

 長期金利と株式市場はこの間の世界景気の回復を反映して、大統領選直後比上昇しているが、外国為替相場は、大統領選挙前後の水準まで戻している。

 先行きも、少なくとも中間選挙の目途がつくまでは覚悟が必要だ。荒れた相場も続くだろう。

 ただ、世界経済は現在回復に弾みがついており、リーマンショックのように直ちに急ブレーキがかかるわけではない。国際緊張の高まりが先送りされていること、所詮選挙目当てであり有権者の意に沿わないことをするはずがないこと、経済面に影響が出そうになれば金融政策を含め政策も反応すると考えられることも安心材料だ。

 この一年半のトランプ神風に感謝しつつ、今後の荒れる市場と中期的な成長力への影響に備えたい。

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