わたしの意見-
水野 創

米朝首脳会談―政治ショーの本質

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2018年6月15日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 6月12日、米朝首脳会談が行われた。会談内容は、共同声明、記者会見の後も双方から様々な形で明かされつつある。

 今回の政治ショーは、主演二人が抱える背景を抜きには評価できない。

 まず、大統領にとっては、11月の中間選挙と2年後の再選が全て。そこに向けメディアへの露出を続け、支持者固めを行うため、各イベントはできるだけ小出しに、そして大波乱の末、大統領自らの力により成功し続ける演出が求められる。今回も従来の6か国協議の枠組みを自らの得意分野である2か国協議に切り替えた。

 一方、北朝鮮は、経済制裁で弱まった経済、政権存続基盤の立て直しが必要で一日も早い制裁緩和にこぎつけたい。ただし、全世界の制裁緩和を実現する必要はない。中国、ロシアできれば韓国、そして実を取れれば十分である。

 こう考えれば、時間的制約があり、並走する複数の案件で勝ち続けることを求められる大統領の方が足元を見られやすい。徐々に明かされる情報はそれを示唆しているように思う。

 従来の6か国の指標を見ると、人口、面積で世界シェア3割、名目GDPで約半分に達する。

 そうした国の指導者の半分が、人権・人道、民主主義、法の支配等の価値観を我々と共有しておらず、内外での要人殺人、武力による国境線の変更をいとわないのが現実だ。

 そして彼らの方が長期政権を実現できるだけに、それを前提とした我々の仲間を増やす外交の役割はきわめて大きいと思う。

 13日には米国抜きの「TPP11」が国会で承認された。今後関連法案の成立を待つ必要があるが、よい知らせだと思う。

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