わたしの意見-
水野 創
所得の増加が消費につながるか
水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2018年8月15日号に掲載)
水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]
4-6月期GDPの1次速報が発表され、物価の変化を除いた実質の季節調整済み前期比が、消費の回復を主因に2四半期振りにプラスとなったことが話題となった(10日)。
もっとも前年比でみると、企業部門の設備投資の増加が目立つが、消費支出を含め全体としては前期から大きな変化はみられない。
今回の特徴は雇用者報酬の大幅な増加と、その割に消費支出が伸びていないことだと思う。
まず、雇用者報酬は物価の変化を除く前の名目で前年比+4.3%と1997年1-3月期の同+4.1%以来の伸びとなった。その背景を毎月勤労統計でみるとパートタイム以外の一般の賃金を中心に賃金の上昇が目立つ(6月の賃金指数同+3.6%。1997年1月同+6.6%以来)。
これに対し、名目の消費支出の前年比は伸びを低めており、消費性向は一段と低下した(最近のピークは消費税率引き上げ前の119.6)。
賞与での業績還元等による労働分配率の高まり(51.6は東日本大震災・リーマンショック後を除くと1999年10-12月期51.8以来の水準)は短期的には許容できても、それが消費の伸びにつながらなくては持続性に欠ける。
今回の所得増加に猛暑効果も加わって、「コト消費」の更なる活発化や季節商品の売り上げ増加、日用品・汎用品を含むある程度の値上げの容認など消費行動が積極化し、企業・家計部門間の好循環につながることが期待される。消費性向の水準が低いだけに、動き出せば効果は大きいと思う。
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