わたしの意見-
水野 創

異次元の勝負に―小休止の後のトランプ政権

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2018年12月7日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 

 米中首脳会談(1日)の後、世界の株式市場が動揺している。そのさ中にファーウェイ副会長拘束が報じられた(6日)。

 中間選挙後の小休止は早々に切り上げて、次の大統領選挙に向け再スタートを切ったのだろうか。今回の動きは、これまでの大統領の行動パターンに照らし大きな違和感がある。

 これまでの大統領の「ツイッター」でのつぶやきによる「脅し」から、国(米国とカナダが連携した)の「組織」による「拘束」という直接、具体的な行動への飛躍である。報道によれば、大統領は事前に報告を受けていなかった可能性すらある。

 短期的な貿易収支改善をめぐる戦争から最新情報通信技術・軍事利用をめぐる中国と米国(とその同盟国)との中長期的な覇権争いへの枠組みの変化ともいえる。

 こうなると株式市場の動揺への配慮など、足元の市場、景気の優先順位は引き下げられる。

 世界経済、国内経済の順調な回復シナリオから、政治・地政学要因により、経済が山を越すとの見方がこれまで以上に強まれば、市場の動揺は一層激しくなる可能性が強い。

 「トランプ大統領は買い」から「トランプ大統領は売り」への変化に、大統領が我慢できるかも不確定要因だ。相手国の中国は、任期の長さも背景に、大統領の足元を見た戦術をとろう。

 なお、国内では、統一地方選挙、参院選、消費税率引き上げに向け財政バラマキを強めている。短期的には世界経済の波乱の影響を緩和することが期待され、外国為替市場では円高方向のリスクが高まることが考えられる。

 これからしばらくの動きに目を離せない。


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