わたしの意見-
水野 創

大統領の市場対策と国家戦略

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2019年2月28日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 年末、年初の動揺から2か月、最近の米国株式市場は26,000ドル台を回復してきた。

 来年の大統領選挙を控え、トランプ大統領は選挙直前の株価上昇に賭けるのではないかという気がしていたが、年初の22,000ドルでは我慢できなかったようだ。その後の米中貿易交渉の進展・関税引き上げの延期をめぐるツイッターは株価に反応したものに見える。

 一方で、大統領の個性発揮を越えた国家戦略として、米中の対立は、単なる貿易戦争ではなく価値観の違いに基づく安全保障の問題になっている。そうであれば、戦いは長期の総力戦になる。国家戦略がグローバルな経済発展に優先する期間も長くなろう。

 この視点からは、長期的な経済的な痛みを緩和し、戦いを有利に進めるために、金融政策も活用し、貿易戦争の当面の傷を抑えるという評価もありうるのだろう。EU離脱時期をめぐる英国の現実的対応も見えてきて、4月以降のIMF等国際機関の世界経済見通しは従来に比べ下振れ幅が小さくなることが展望される。

 そうした中で日本経済は、世界経済への影響はまだ部分的で、年初に比べマインドも改善している。選挙・消費税率引き上げ対策のバラマキ予算も成立が間近だ。ただ、為替、株式、債券市場は米国金利先高観の後退による為替市場の円高ドル安、株安傾向と、それを緩和するための債券市場高(長期金利低下)の組み合わせとなり、相対的に居心地が悪くなってきた。

 これが長引いた場合の長期金利マイナスの副作用も、昨年までのスルガ銀行や東日本銀行の不祥事の発生の事例もあり心配だ。日本も組織的な長期戦への備えが必要な状況になっていると思う。

 なお、米朝2回目の首脳会談が開催されているが、北に本気で核を手放す気が無く、大統領の任期が先に来る以上、ショーの演出だけが関心事だ。

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