わたしの意見-
水野 創

日米貿易交渉より米中覇権戦争の帰結

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2019年5月31日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 トランプ大統領が「8月には良い発表ができるだろう」という言葉を残して帰国した。

 「7月の参院選(衆参同時選)への配慮」とされるが、これで8月以降の解散総選挙は打ちにくくなっただろう。

 そして、その後の市場を見ると、日米関係より、米中覇権戦争の景気への悪影響を懸念した動きとなっており、「景気の悪化」は「アベノミクスの失敗」との評価につながり選挙に不利と思えば、これも早めの解散総選挙に出る誘因になる。安倍政権にとって選択肢を狭める結果だ。

 市場の動きを具体的に見てみよう(表)。

 ①日米の株価はそれぞれ先週末対比で▲0.8%、▲1.7%の下落と米国の低下がより大きく、2019年4月のピーク比では▲6.1%、▲5.6%の下落とほぼ互角になった。こうした状況でも、トランプ大統領お得意の「つぶやき」はない。

 ②日米の長期金利もそれぞれ、▲0.015%ポイント、▲0.07%ポイントの低下となった。年初来ピーク比では米国の方が大きく低下している。日本の水準は29日には▲0.1%に達した。

 ③外国為替市場(ドル/円)では109円台 の円高となった。

 トランプ大統領は再選を狙い、大統領選挙に焦点を合わせた行動を続けるだろう。今年はまだ助走、足元の水準を低めピークとの差を大きくしたほうが効果的と思っていると思う。当面、市場の流れは変わりにくい。

 そして、どこかのタイミングでトランプ大統領は金利引き下げ圧力を強め、その時の日本の長期金利の低下余地の少なさを考えると、先行きは一段の円高・株安リスクがある。

 日本にとっては厳しい環境が続く。それを緩和する備えが欲しい。

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