わたしの意見-
水野 創

トランプ流市場操作術の持続性

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2019年7月18日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 米国株式市場が最高値を更新している。米国中央銀行の利下げ見込みや米中貿易摩擦交渉の進展期待を背景としたものだが、以下の事情を考えると、どこまで持続性があるか疑問だ。

 ①米中覇権戦争の影響の広がりから世界経済は減速傾向を強めている(IMF世界経済見通し〔4月〕2018年+3.6%、2019年+3.3%〔1月比▲0.2%〕)

 ②米国以外の主要国の株価はピーク比1~2割低下している(図表1)。

 ③米国株価は前回の経験に比べ既に大幅に上昇している(GDP上昇率との比較、図表2)。

 ぎりぎり2020年の大統領選挙までではないだろうか。

 すなわち、2020年11月まで、トランプ大統領は再選に向けてなりふり構わずFRBに圧力をかけ、市場の動きをにらんで時に黙り、時に目くらましのような情報を繰り出すだろう。

 FRBが2016年12月から8回の利上げを行っており来年11月までであれば利下げ余地は十分ある。また、貿易の枠を越え安全保障にかかわる覇権戦争になっている米中に短期的な解決はあり得ない。目先1年強であれば、関税、個別企業問題などで瞬間芸や政治ショーを続けることは、大統領には朝飯前だと思う。

 しかし、時の経過と共に覇権戦争の影響が大きくなり、最悪それに昨年のアップルの新型スマホの不振のようなイノベーションの限界(ITバブル崩壊の再現)が重なって世界景気が大きく減速する。それに対し大統領が適切な対応をとれない、特に大統領選挙後は(勝敗にかかわらず)それまでと同じパフォーマンスを続ける意欲・気力を失っているリスクが想定される。

 その時期日本はオリパラ景気の反動と消費税率引き上げの影響緩和策の効果一巡も加わる。

 企業経営者も政策当局も今から心構えが必要だ。

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