わたしの意見-
水野 創

IMF世界経済見通しが示す減速感

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2019年7月26日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 IMFの最新の世界経済見通しが23日に発表された(図表1)。

 4月の前回見通しに比べ下方修正されているが、世界経済の減速感は、1年前、ここ数年で一番高めの見通しだった2018年7月見通しとも比較することで一層明確になる(図表2、3)。

 ①2018年は1年前の3.9%の成長予測から3.6%成長に下振れ。米中貿易摩擦のほか、英国をめぐる混乱、米国金利引き上げの各国への影響、アップル新製品の新型スマホの売れ行き不振などが重なった。

 ②2019年は3.9%成長から3.2%成長へと、2018年に比べ一段と大きな下振れ。米国、中国の成長率も下方修正されている。

 ③2020年は、新興・途上国の回復、「貿易摩擦をめぐる意見対立が解決に向かうこと」を前提に3.5%成長を予測しているが、それでも先進国は一段の減速となる。

 この結果、世界経済の成長率は2017年の3.8%から2018年3. 6%、2019年3.2%と連続して減速することになる。米中摩擦が貿易から技術・安全保障を含む覇権戦争に拡大し、長期化が避けられなくなっていることを考えれば、2020年も容易なことではない。

 こうした理解に立てば、現在、各国が金融緩和、経済対策実施に向かっているのも当然だ。

 日本は、こうした環境の下で消費税率引き上げ、オリパラ景気の反動という個別の下押し要因を持つ。2020年の成長率予測は0.4%だ。金融・経済政策で割り負けないようにするとともに、構造的な消費性向低下要因となっている年金・医療・福祉の制度設計をできるだけ早く示し、人生100年時代を安心して迎えることができるようにする必要があると考える。

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