わたしの意見-
水野 創

米国は金利引き下げ。日本が「躊躇なく」行うべきこと

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2019年8月1日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 米国FRBが金利を引き下げた(7月31日)。米中覇権戦争の景気への影響懸念に対応したものだが、市場もトランプ大統領も荒れている。FRBへの圧力は果てしなく続くだろう。

 一方日本では、安倍総理も、黒田総裁が「躊躇なく」を乱発している。

 「リスクが顕在化する場合には、機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行」(安倍総理。29日経済財政諮問会議)、「「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれるリスクの顕在化を未然に防ぐために必要と判断する場合には、躊躇なく、政策対応を行う」(黒田総裁。30日記者会見)等。

 同時に示された経済見通しは、民間、日銀、政府の順で甘めで、民間と政府の見通しの違いは、民需に対する見方の差だ。

 民需の見通しの妥当性はどうか。家計が将来不安から貯蓄に励んでいること、企業は海外経済の減速や消費税率引き上げの影響で今後設備投資への影響も懸念されること等、方向としては民間に分がある。

 今政府に求められるのは、「リスクの顕在化」を待つのではなく、人生100年時代を安心して迎えることができるよう年金・医療・福祉の制度設計に「躊躇なく」着手することだ。消費性向が2014年以降の趨勢的な低下から上昇に転じ、その効果が企業にも及ぶことで、結果的に、政府見通しが当たるよう願いたい。

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