わたしの意見-
水野 創

景気の実体と強まる先行き不安

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2019年8月16日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 市場はトランプ大統領の衝動的行動と世界経済に対する先行き不安の強まりから大荒れだ。

 それでは景気は現時点でどこまで影響を受けているのだろうか。先週発表された4~6月期実質GDP1次速報で見てみよう(8/9発表)。基本的に1~3月期から大きな基調変化はない。

 ①輸出は2期連続で前年比減少となりその幅も拡大している。米国、中国、欧州など国、地域により差はあるが、全体として海外景気が既に減速していることを示している。

 ②国内の企業部門は、設備投資も雇用者報酬(企業にとっては雇用×給与の支払い)も伸び率が幾分低下している程度にとどまっている。輸出関連企業は影響を受けているはずだが利益水準がまだ高いほか、輸出の影響の及びにくい非製造業が好調なことによる。

 ③国内の家計部門は伸びを高め、上記非製造業を支えた。雇用者報酬が一定の伸びを確保し、5月には10連休もあったことによるが、消費性向が反転上昇するには至っておらず、人生100年時代の先行きへの不安が抑制要因になっていることを示している。

 また、既に半ばを過ぎた7~9月期は、国際機関の経済見通しも下方修正されるなど世界景気の減速がより明確になり、それと共に、先行きに対する不安もより強まっている。

 国内の家計部門についても今の政策の下で消費性向の反転上昇による個人消費の本格的な回復は見通し難い。10月以降は消費税率引き上げの影響も加わる。

 企業部門はこうした前提の下で、今のうちにイノベーション、生産性向上、省力化関連の設備投資を進めておくことを期待したい。

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