わたしの意見-
水野 創

先行する大企業製造業の減速―9月調査日銀短観

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2019年10月4日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日銀の9月調査の短観が公表された(1日)。

 業況判断が一段と悪化し、特に、米中覇権争い長期化など海外要因に消費税率引き上げ、オリパラ関連工事の一巡など国内要因も加わる先行きには厳しい見方が示された。業況判断のピークは2017年12月だったが、先行きは企業規模、業種を問わずのピークを下回る水準となっている(図表1)。

 そして、大企業製造業は、業況判断だけでなく、事業計画についても一部厳しい見方となっている。

 すなわち、2019年度事業計画の売上高経常利益率は、2017年度のピークから低下してきているとはいえ、全体としてはアベノミクス開始時に比べまだ高水準だ(図表2)。2019年度設備投資計画も、前年度が高水準だった中小企業・製造業を除けば底堅い(図表3)。

 しかし、2019年度売上高経常利益率を上期、下期に分けてみると、他の規模・業種に比べ大企業製造業の下期の悪化が目立ち、その水準は2013年度と並ぶ。今後、内外要因から、これがさらに悪化したり、他にも及ぶことになると、設備投資計画だけでなく、雇用や時間外賃金、賞与にも影響して来年度に向け厳しさが増すことになる。

 2020年に向けて、トランプ大統領は大統領選挙を意識して景気・株価維持のパフォーマンスを続けるだろうし、安倍政権も消費税率引き上げによる景気腰折れ批判を回避するため、積極的な対策を講じるとみられるが、9月短観も対策の必要性を示唆している。しっかりした情勢判断の下、適切な対応を期待したい。

 

 

 

 

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