わたしの意見-
水野 創

金融相場?トランプ相場?

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2019年11月8日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日米の中央銀行による金融政策を決定する会議が終わり、米国は3回連続の利下げ(30日)、日本は現状維持とフォワードガイダンスの見直しとなった(31日)。

 日銀が同時に発表した来年度の物価見通しは、民間はもとより政府の見通しに比べても強気で、副作用の大きい緩和強化の先送りと整合性を取るために引き続き苦労している。

 この間、株式市場は、米国の利下げとトランプ大統領の米中貿易戦争の部分合意や追加関税の段階的撤廃期待から米国では最高値更新、日本も連れ高になっている。

 大統領選挙までまだ1年あるのに、今から中国政策の切り札まで使うのかとも思うが、大統領としては議会による弾劾調査進行から関心をそらしダメージを和らげるためには、誰にでもわかりやすい外交交渉や株価上昇を使うのがよいと直感したのだろう。

 もっとも24日に行われたペンス副大統領の中国政策演説は価値観、知的財産権などの原則を崩していない。大統領をめぐる環境が改善しさえすれば、すぐに元の強硬路線に戻し、大統領選挙直前に高値になるような相場観で口先介入を繰り返すだろう。価値観等での後退批判を防ぐことにもなる。

 局面としては金融相場だが、実際はトランプ相場だ。トランプ相場に理念はない。その時々の損得勘定で動いているとの理解が必要だと改めて思う。

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