わたしの意見-
水野 創

慎重な経済見通しと強気の市場

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2020年1月23日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 先週から今週にかけて経済見通しの改定値が次々と発表された。世界経済についてIMF(20日)、国内経済について、日本経済研究センター(ESPフォーキャスト調査、15日)、日銀(21日)などだ。米中貿易交渉の第1段階合意や各国の政策対応を織り込んで昨年秋の前回見通しに比べ幾分和らいだ感じもあるが、全体としては慎重な見通しが続いている。

 米国について、IMFは2020年、2021年と減速を続けると見通している。これに対し、米国の株式市場は強気で最高値を更新しているが、大統領選挙を控え、少しでも懸念材料が出れば、トランプ大統領が口先介入(場合によっては実質的な譲歩等)を行い、FRBも昨年末に据え置いた政策金利を再び引き下げることになると見ているからだろう。短期的には市場の見方に分があるのだろう。

 日本については、民間、日銀、政府で2020年度の成長率見通しの差が大きいが、ちょうど一年前の2019年度見通しと同様、政府見通しは経済対策の効果を大きく織り込み過ぎている。一方で、中国発の新型肺炎の影響なども加わって、仮に民間見通し並みに減速する可能性が高まれば、財政面から更なる追加経済対策が打ち出される可能性が強い。このため2020年度は、最終的には政府と民間の中間、2019年度並みの成長に着地すると思われる。民間部門を取り巻く環境に大きな変化はなく、財政次第となる。

 2021年(年度)の日本について、ESPフォーキャスト調査や日銀は回復の加速を期待しているのに対し、IMFは一段の減速を見通している。海外は民間部門の成長力について厳しい目で見ているのだろう。イノベーションの推進に取り組み実績で勝負したい。

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