わたしの意見-
水野 創

特色ある地域に―文化創造

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2020年10月13日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

  10月3日に千葉交響楽団の第108回定期演奏会が行われた(千葉県文化会館)。コロナ禍で感染防止策を取ったため座席数は減ったがチケットは完売だったそうだ。

 私は前日のリハーサルの一部を聴いた。

 リハーサルでは、一通り演奏したところで山下音楽監督が注文を付けていくのだが、指揮をしながら、膨大な楽譜の中の指摘する箇所をよくこれだけ覚えているなあということにまず驚く。一方、次々示される簡潔かつ膨大な指示をその場で消化して演奏に反映させる各パートの演奏者の能力の高さも、素人には信じられない。作業は本番の演奏時間をはるかに超えて続くが、本番で最高潮に持っていく集中力と体力にも圧倒される。ソリストとオーケストラの関係でも毎回個性が発揮され、多数のプロの演奏家が創り出す生の音楽に接する、贅沢な環境を持っている私たちは本当に幸せだと思う。

 音楽に限らない、千葉県には、スポーツ、美術、歴史など県内各地にそれぞれの人の関心に応じる多様な文化がある(表)。

 これらは、住む人の生活の質を高めるとともに、関連するビジネスの展開、演奏会・試合・展覧会等への来訪者増などの効果を持ち、地域のブランド力を高める要素の一つとなる。

 コロナ禍を経て、東京都以外で働く、住む動きが始まっている。現時点では、交通・通信インフラ、医療・防災、子育て・教育、商業・娯楽施設、自然環境、地価などの要素が重視されるのだろう。しかし、それらの人の地元で過ごす時間の増加とともに、こうした文化が地域とのつながり・親しみを深め、その人たちも加わった新しい文化を創造していくのだろうと期待される。

 文化の創造には時間がかかる。千葉交響楽団の山下音楽監督も今年度で5年の契約が終わるが、来年度以降の更なる手腕の発揮を大いに期待したい。コロナ禍の一方、オリパラ・同レガシー効果も展望される。多様な文化を育てる県民の積極的な参加・応援も期待している。

 

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