わたしの意見-
水野 創

バイデン大統領就任!前政権から決別できること、できないこと

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年1月27日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

 1月20日、バイデン大統領が就任した。就任初日には15の大統領令に署名し、前政権からの決別を宣言した。SNSを使った特定の個人、企業等に対する不意打ち、圧倒的な力の差を背景とした個別交渉の手法からの解放感も大きいと思う。

 ただ、バイデン大統領の15の署名にTPP復帰は入っていない。国内経済向けに財政政策・インフラ投資や米国製品購入等をうたっているが、これだけでは前政権誕生の鍵となったラストベルトの不満の解消にはつながらない(図表1)。

 ①中間層の没落をもたらした産業構造の激変は、経済のグローバル化や技術革新の結果だ。その変化はAI、GAFA、EV、5G、SDGs、米中覇権争い等に代表されるようにこの4年間でさらに進み引き返すことはない(図表2)。

 ②コロナ対策でばらまかれた財政資金は、結果的には株式・不動産等資産価格の大幅な上昇をもたらし、資産を持つ側と持たない側との格差を一段と拡大している。ワクチンの普及によりコロナとの共存関係が構築されるまでの数年間、拡大は続くだろう。

 中間層の置かれた環境は厳しさを増している。今回示されたような支援策は一時的なつなぎに過ぎない。本格的に立て直すためには、資産を持つ側から持たない側への所得の移転を求めるとともに、環境変化に応じた働く側の変化も求めることになるが、どちらも実現するのは難しい。

 選挙により政権が代わっても、決別できない環境変化が進んでいることを前提に、経営・生活設計を考えていかなくてはならないと改めて感じている。

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