わたしの意見-
水野 創

19兆円の第3次補正、国債発行は22兆円

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年2月1日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

 1月28日、経済対策関係で19兆円の第三次補正予算が成立した。

 予算に盛り込まれる新型コロナ拡大防止策、ポストコロナに向けた経済構造転換・好循環実現、防災・減災・国土強靭化の推進の財源には22兆円の国債発行が充てられる。税収の当初予算比8兆円下振れに伴い、経済対策関係経費を上回る発行だ。1~3次補正合計で、国債発行の増加額は80兆円、うち特例国債は65兆円に達する(表1)。

 その異例さは、東日本大震災後の復興債残高(年末)が2013年末のピークで13兆円だったことと比較しても明らかだ。

 これまで、会員の皆様との意見交換の場で国債急増への懸念を数多く伺っているが、心配はますます増すと思う。

 さらにコロナ対策による財政悪化は日本だけではない。1月27日に発表されたIMFの財政モニターの改訂版は各国政府債務の名目GDP比10~20%ポイント以上の大幅増加を指摘している(表2)。

 ワクチン普及により世界中でコロナ禍が収束に向かうには数年単位の時間がかかり、その間、各国政府による財政支援が不可欠だ。そこで積み上がる政府債務は、「膨大な政府債務を、時間をかけて、いかに破綻せずに着地させるか」という日本の課題を、日本ほどではないにしても日本以外の多くの国に直面させることになろう。

 日本の場合、幸いなことにインフレや市場の激震なしにここまで来ている。しかし2010年のギリシャ危機のように世界経済を揺るがし、当時のECBドラギ総裁の「ユーロ圏を崩壊から守るためには何でもやる」発言で救われた経験もしている。

 すべての国が日本のように進むとは限らない。経済基盤や国際的な資金調達力の弱いどこかの国が長期の再建途上で発するリスクへの心構えもしておきたい。

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