わたしの意見-
水野 創

「新しい資本主義」の経済効果―待ち遠しい全体像の提示

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年1月25日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所 前取締役会長]

 岸田首相の、文藝春秋2月号の「新しい資本主義」についての寄稿では、グランドデザインと共に具体的施策についても触れている。

 「成長と分配の好循環」につなぐ3本柱(①科学技術立国の実現、②デジタル田園都市構想、③経済安全保障)による「大胆な投資」と「分配の強化」による「消費拡大」の実現に向けた、30兆円の研究開発投資、10兆円規模の大学ファンド、2兆円のグリーンイノベーション基金、人的資本への4000億円規模の施策創設などだ(表1)。

 今後検討される施策、既にある制度との関係等全体像は「2023年G7サミット日本開催を見据え、今夏に実行計画、工程表を策定」とされているので現時点では不明だが、寄稿の金額を足すだけでも数十兆円にのぼる。

 ただ、同じ、「格差拡大」、「気候変動」を問題意識に持つ、バイデン大統領の昨年4月の議会演説の「米国雇用計画2兆ドル」、「米国家族計画1.8兆ドル」と比べると、米国の経済規模が日本の約3倍であることを考慮しても現時点ではやや物足りない気もする(表2)。

 背景には日本の厳しい財政事情がある。夏までの内容詳細化の中で、中長期的な潜在成長率引き上げに貢献する施策にメリハリをつけて資源を割り振ることが必要だ。

 また、バイデン大統領は施策の財源として「増税」も主張している。岸田首相は「新しい資本主義」の実現による「中長期的な財政の持続可能性確保」を目指しているが、「ワニの口」を閉じる、より具体的な施策を示すことが、国民の安心を通じた消費の拡大にもつながると思う。 全体像に期待したい。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。