わたしの意見-
水野 創

地域と「持続可能な観光」

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年3月10日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所 前取締役会長]

 今話題のSDGsの目標年は2030年。30年はゼロカーボンに向けても節目の年で、我々を取り巻く環境は大きく変化しているだろう。そして変化の中には人口も含まれる。

 先週の成田空港活用協議会主催セミナー「DMO(観光地域づくり法人。Destination Management/Marketing Organization)養成塾報告会」での挨拶で、環境変化の一つとして県の人口にも触れたところ、参加者から「県全体だけでなく、地域による差の大きさも重要だ。人口減少が厳しい地方では観光客・交流人口増加を図ることが急務だ」というコメントをいただいた。

 県人口の増勢持続は県の元気の良さ、ブランド力を示す象徴的な指標だが、地域の将来に向けて、各地域の人口を把握しておく必要があるのはもちろんだ。

 因みに、2020年国勢調査で、15年比増減率が県内最高の流山市、最低の鋸南町、そして人口が最多の千葉市の状況を確認しよう(表)。子育て世代の転入が続く流山市では、まだ年少人口の人数・割合が増加中だが、高齢化を先取りしている鋸南町では、老年人口人数は①峠を越すが、②生産年齢人口の人数を上回っている。千葉市は今後増加する老年人口の人数が多い。

 限られた人的資源でいかに生産性を高めるかがカギになる。SDGsに対応した「持続可能な観光」についてUNWTO(国連世界観光機関)は「訪問客、産業、環境、受け入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分配慮した観光」との考え方を示している。考慮すべき3つの領域のイメージは以下のようなものだろう。

 ①現在と未来の環境:自然や生物多様性の保全等

 ②社会文化:地域の伝統・文化の保存・継承、地域の新しい文化の創造

 ③経済:働く場の創出、新たな投資、定住・交流人口の増加等による地域経済の活性化

 人権や国籍、民族や宗教、ジェンダーや年齢、障がいの有無等に関係なく全ての旅行者が快適で安全・安心な旅行ができる「ユニバーサルツーリズム」とともに、今後の観光による地域振興の指針になる。

 保全・継承と変化に応じた新しい観光の創造の両立を目指したい。

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