わたしの意見-
水野 創

結果は様々 ―人口増減に見る地方創生の成績

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年3月25日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所 前取締役会長]

 千葉県内で最も人口減少の厳しい鋸南町は、年齢別人口構成の推移から、進学時、就職時に地域を離れる人が多く、その結果子育て世代の人口も減少し、更なる年少人口の減少をもたらしていることを確認した(前号)。

 これまでの地方創生努力が結果を伴っていないわけだが、県内の他の地域はどうだろう。鋸南町に加え、特徴ある以下の3町について調べてみた(表)。

 ①多古町:成田空港の発展、機能強化の効果がもっとも期待される空港周辺9市町の一つ。

 ②一宮町:2020オリンピックのサーフィン会場。

 ③大多喜町:歴史、里山文化の観光資源を多く持ち圏央道効果も期待。

 表は、例えば、20年国勢調査の5~9歳の欄には、20年国勢調査の5~9歳人口の15年国勢調査時0~4歳人口比増減率を載せている。生年が同じ人の集団が5年間の転入・転出・死亡でどのように変化したかを示し、進学、就職期に同年齢の集団からどのくらいの人が地域を離れたかが一目でわかる。

 結果は厳しい。10代後半の進学・就職時に約1割、20代前半の就職時に2~5割の人が地域を離れていた。

 地域により差が大きいことも明確だ。

 ①多古町は10代後半から20代前半の減少幅は縮小し、また、就職時の減少率は他の2町比少ない。子育て世代は転出超から転入超に代わっている。

 ②もともとサーフィンの拠点だった一宮町は10年調査時から子育て世代が転入超。就職時の減少率も多古町に次いで小幅。

 ③大多喜町は子育て世代層で10年調査時に比べやや改善している層もあるが、10代後半から20代前半は10年を上回る減少率。相対的に、まだ資源を十分活用できていないようだ。

 資源やインフラ整備効果に差があることは事実だが、地域の現状と目指すべき将来像を確認したうえで、関係者が連携することが地方創生の第一歩だと思う。

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