Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

7~9月のGDPは民間予想を幾分上回るリバウンドだが

「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2020年11月16日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 今週月曜日に公表された7~9月の実質GDPは前期比+5.0%と、4~6月に大幅減少(-8.2%)の後、民間エコノミスト予想の平均(+4.2%<日経センター調べ>)を幾分上回るリバウンド


 企業業績の悪化などを反映し、設備投資(-3.4%)が2期連続の減少となったが、前期に大きく落ち込んだ消費(+4.7%)と輸出(+7.0%)が持ち直したほか、経済対策の効果などから公的需要(+1.9%)も増加。企業の支出抑制というコロナショックの二次的影響がジワジワ拡がる一方、直接的影響は和らいできているという姿だ。


 ただし、海外主要国間で成長率を比較すると(図表1)、7~9月は米欧に比べ日本の戻りが鈍い。米欧では、ロックダウンによって4~6月の落ち込みが大きかった分、7~9月に戻りが強めに出やすいこともあるが、日本では、感染に対する人々の警戒感が強く、夏場の感染再拡大の中でサービス消費の戻りが鈍かったことが影響したとみられる。ちなみに、7~9月の前年比を比較しても、日本が-5.8%と、米欧に比べ弱め。この間、感染の早期収束に奏功した中国では、すでに4~6月に1~3月の落ち込みを取り戻した後、7~9月も着実な成長を実現。


 10~12月の実質GDPについては、米欧での感染再拡大が深刻であり、とりわけ欧州では外出制限などによってマイナス成長になるとの予想がある一方、日本では相応のプラス成長が見込めそうだ。先週のビジネスレターで指摘したように、Go Toキャンペーンの効果もあって、9月後半からサービス消費にもやや勢いがみられており、景気ウォッチャー調査の景況感も、10月調査の段階では、現状・先行きともに改善傾向(図表2)。


 米欧の状況をみると、経済回復を急ぎ過ぎると、感染拡大が深刻化し、結局、経済回復を阻害してしまうため、感染防止と経済活動のバランスについて、微妙な舵取りが大事のようだ。日本でも、ここにきて感染が再拡大しているだけに、両者のバランスに細心の注意が必要と思われる。

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