Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

経済活動と感染防止のバランス

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2020年11月25日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 新型コロナの感染再拡大のペースが急だ。全国では、新規感染者数が2000人を上回る日が続き、重症者数も11月23日時点で345人と春のピーク(4月30日328人)を幾分上回った。千葉県では、重症者数は11月24日時点で9人となお春のピーク(4月15、16日22人)を下回っているが、新規感染者数は100人を上回る日もあり、警戒を要する。


 感染拡大は複合的な要因による。第一に経済活動の活発化である。下図にみられるように、ヒトの動きは、9月半ばから再び活発化しており、これがラグを伴って感染拡大につながったと考えられる。この点、各種Go Toキャンペーンが本格化したことも、感染拡大に影響しているとみるのが自然だろう。


 第二に季節的な要因である。感染拡大ペースは、ヒトの動きの増加ペースを上回っている。北海道など寒冷地域での感染拡大も目立っており、寒さや乾燥といった季節要因が感染拡大を加速させやすくしているとみておくべきだ。


 第三に人々の気の緩みも挙げておきたい。夏場には、春を上回る感染となったが、医療体制の逼迫に陥ることはなかった。これは、春に危機を経験したことで、国全体として工夫を重ねた結果だと思われる。他方、その成功体験によって、やや気の緩みが生じていた可能性もある。


 第二の季節的な要因は当面強まる方向にあるため、第一と第三の要因を修正するしかない。政府はGo Toキャンペーンの一部見直し方針を示しているが、これは9月半ばから踏み込んできた経済活動のアクセルを少し緩めるとともに、人々の感染への警戒感を高めることが目的と思われる。欧州では、夏場に経済活動のアクセルを踏み込みすぎて、結果的に急ブレーキに繋がったが、その二の舞を踏まないことが重要だ。


 コロナの正体はみえてきてはいるが、なお未知な部分は少なくない。経済活動と感染防止のバランス確保は難しく、経済活動という車を走らせ続けるためには、周りの状況に注意しながら、その時々で柔軟かつ適切に対応していくしか手はないだろう。同時に、今回の経験を踏まえ、Go Toキャンペーンについても、期間や補助率など制度設計において、短期間に消費を煽り過ぎないような工夫が必要だ。

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