Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

緊急事態宣言後の経済指標

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年3月10日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 年明け後に緊急事態宣言が発令され2度延長された。その間のわが国の経済指標をみると、意外に底堅いという印象だ。殆どのデータは1月分まで、一部のマインド指標のみ2月分が利用可能だが、全体としては、1月の落ち込みは小幅で、2月には緩やかな持ち直し傾向がみられる。


 まず、輸出・生産といった製造業の活動は、世界貿易の回復傾向を反映し、1月も増加傾向を維持(図1)。感染拡大の中でも、経済全体を支える原動力だ。


 消費動向をみると、1月は、家電や車など耐久財がさらに増加した一方、サービスは減少しつつも昨春と比べると小幅で、消費全体として数%の落ち込みにとどまった(図2)。ただし、百貨店が高齢者の来店減などから大幅に減少(前年比、12月-13.7%→1月-29.7%)、外食もマイナス幅を拡大(同-15.5%→-21.0%)、宿泊者は週次データで1月入り後前年比-8割程度の落ち込みとなっており、業種によるバラツキが大きい。


 雇用は、全国・千葉県ともに有効求人倍率が1月に若干改善(図3)。緊急事態宣言による求職活動の手控えも影響しているが、雇用環境が悪化しているとは見なくてよさそうだ。


 マインドは、景気ウォッチャー調査が、1月に低下したあと2月に持ち直し(図4)。特に先行き判断の改善が顕著。別のデータでヒトの動きをみても、1月下旬を底に回復しつつあり、マインド改善を裏付け。


 業種によるバラツキを伴いつつも、経済活動が総じて底堅いことは、感染が収束し切らない背景でもある。感染が急拡大すると、経済に急ブレーキとなりかねない。緊急事態が解除された後も、一気に経済活動に軸足を移すのではなく、感染防止に引き続き細心の注意が必要だ。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。