Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

千葉県企業のデジタル化

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年9月2日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 9月1日、デジタル庁が発足。コロナ禍で顕在化した日本のデジタル化の遅れを眺め、「デジタル社会の実現に向けた改革」が、官民挙げての重要な課題となっている。こうした状況を踏まえ、ちばぎん総研では、千葉県の企業に対しアンケートを実施し、それを基に「県内企業のDX推進の現状と課題」をレポートとして取り纏めた(ちば経済季報2021年秋号)。


 アンケート調査の主な内容は以下のとおりである(詳細は同レポート参照)。


 ① 企業の半分弱がすでにITを活用し、2割弱が活用を検討。その内容はEメールやホームページ、財務・経理システムなどの基本的なものが多い。


 ② IT活用の効果については、営業力強化に比べ業務効率化の方が、期待通りの効果を感じる先が多い。


 ③ IT活用に関する課題や取組まない理由としては、コストの問題のほか、人材不足やノウハウ不足を挙げる先が多い。


 アンケート内容が示すのは、千葉県企業でもIT活用は相応に拡がっているが、その内容は基本的なものにとどまる先が多く、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉が示すような、「激しい環境変化に対応するため、デジタル技術の活用によって、企業文化そのものを変革する」ところには至っていない、というものだろう。県内企業にとって、すでに導入している先を含め、IT活用の余地はまだまだ大きいと考えられる。


 米国は世界一のIT先進国とされるが、実はIT投資の対GDP比率をみると、日米ともに3%程度と殆ど差がない。しかし、米国は日本に比べ、業務効率化といった「守り」より営業力や製品・サービス開発の強化など「攻め」にITを活用している例が多い。また、日本では既存業務をそのままシステム化する例が多い一方、米国ではIT化を契機に業務の抜本的な改革に着手する傾向が強い。規模の面ではさほど変わらないが、質の面で大きく異なるということであり、日本でも参考にすべきポイントだ。


 IT化そのものは目的ではなく、あくまで手段である。目的は企業の生産性や収益力の向上に資する業務変革であり、そのためにITを活用するということだ。「デジタル生産性」の向上には、ITという貴重なツールの存在を前提とした経営戦略の策定が重要であり、経営層のリーダーシップが大事な要素となる。同時に、業務変革が円滑に進むためには、従業員の間で「デジタル・ファースト」の意識が根付き、ITリテラシーが向上することも望まれる


 社内での人材・ノウハウ不足を補うためには、民間専門家によるコンサルティングやセミナーの積極的な活用も有効だろう。また、国の「IT導入補助金」をはじめ公的な補助金・助成金も数多くあるので、その活用も推奨したい。

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