Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

千葉県の公示地価:高まる上昇率

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年4月9日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 3月下旬に公示地価(24年1月1日時点)が公表された(表1)。全国の地価は、全用途平均が前年比+2.3%とコロナ禍でいったん下落したあとの3年連続上昇となり、上昇率はバブル末期の1991年(+11.3%)以来の高さとなった。

 千葉県の公示地価は、全用途平均が前年比+4.7%と11年連続で上昇し、91年(+20.3%)以来の上昇率となった。これは東京圏の中では東京都に次ぐ高さであり、神奈川県や埼玉県を上回る。

 千葉県の地価を用途別にみると(表2)、工業地が+9.6%と突出するが、商業地(+5.3%)、住宅地(+4.3%)もしっかり上昇した。

 東京圏の地価を細かい地点別にみると、千葉県の上昇が目立つ。いずれの用途でも上昇率の第1位は千葉県の地点。住宅地は流山市おおたかの森(+17.2%)、商業地は千葉市美浜区豊砂(+27.1%)、工業地は市川市塩浜(+29.0%)。また、住宅地と工業地は東京圏の上位10地点が全て千葉県、商業地は10地点中6地点が千葉県だ。

 住宅地では、東京都の地価やマンション価格の上昇から、隣接する千葉県の北西部や西部への人口流入が進み、それら地域の地価上昇に繋がっている。また、工業地については、物流施設関連の需要拡大が地価上昇の主たる背景であろう。

 いずれについても、千葉県の地価の割安感が地価上昇の基本的な背景。ピークであった91年と比較すると、千葉県の24年水準(全用途平均)は27%にとどまり、東京圏(52%)や全国(43%)に比べかなり低い。千葉県はバブル崩壊の傷跡が大きいとみられるが、その分、割安感からの上昇余地はまだ大きい。

 このように千葉県では東京都の隣接地域を中心に地価上昇が続く一方で、南総・外房地域では地価下落に歯止めがかからない。このことは、地価がバブルではなく需要に応じた価格形成を意味するが、南総・外房地域の経済発展の必要性を示すものとも言える。

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