Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

過去の巳年の出来事

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年1月7日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。本年初の点描のテーマは「過去の巳年の出来事」です。

 巳年は脱皮する蛇のイメージから「復活と再生」を意味するとされる。過去3回の巳年を振り返ると(表1)、2013年には異次元金融緩和の開始や東京オリ・パラの決定、2001年は自民党で異端とされた小泉氏の政権誕生や中国のWTO加盟、1989年には平成時代のスタートやベルリンの壁の崩壊など、たしかに新たな前向きの動きがみられた。

 同時に、2001年は米国で同時多発テロ(9.11事件)が発生、1989年には日経平均株価が史上最高値を更新し結果的にバブル崩壊への入り口となるなど、暗い方向への出来事もみられた。いずれにしても大きなイベントが発生したということだ。

 民間エコノミストの予測をみると(表2)、25年度の実質成長率は1%程度と24年度の0.4%を上回り、経済の実力である潜在成長率(0%半ばから後半程度)よりも幾分高い。また、消費者物価上昇率も2.0%と24年度の2.5%から低下する。基本的には、物価が安定に向かうもとで堅調な成長が実現できそうとの見立てだ。

 ただ、前回の点描(「来年のビジネス環境はどうなるか」)でも示したとおり、米国のトランプ大統領に代表されるように、海外の政治情勢や政権運営は不透明感が高い。今のところ、ウクライナ情勢やイスラエル情勢の先行きもみえない。

 エコノミストの予測のように穏やかな経済となるのか、あるいは、過去の巳年にみられたように大きなイベントが発生することとなるのか、その場合に明るい方向なのか暗い方向なのか、非常に読みづらい。年初から株価の変動も大きくなっている。

 「明るい方向のサプライズ」を期待したいところだが、様々な可能性を念頭に置く必要があることは言うまでもない。情報収集力と情勢判断力そして柔軟な対応力が問われる年となりそうだ。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。