Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

9月後半からはサービス消費にもやや勢いがみられるが

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2020年11月11日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 コロナ禍の個人消費動向をみると、9月時点では、モノの消費がコロナ禍前の水準をほぼ取り戻す一方、サービス消費は弱いという対称的な動き。例えば、外食売上高(日本フードサービス協会)や宿泊者数(観光庁)の前年比は、それぞれ9月時点で-14.0%、-47.6%と、ボトムの
-39.6%(4月)、-84.9%(5月)に比べれば持ち直したとは言え、なお大きなマイナス。


 ただし、直近までのサービス消費について、政府が公表するV-RESASの週次データを確認してみると、次のような前向きの動きがみられる。


 ①全国ベースでは、9月後半以降、夏場に伸び悩んでいたヒトの動きが再びやや活発化する中で、飲食店情報のネット閲覧数、宿泊者数が、ともに前年比マイナス幅を明確に縮小し、週によってはプラスに転じるものもみられる。


 ②そのうち、都道府県別のデータが利用可能な飲食店情報の閲覧数について、千葉県と東京都、全国を比較してみると、千葉県での回復ペースが相対的に早めである。


 これらの背景としては、新型コロナの感染拡大が8月にピークを迎えたあと再び一旦落ち着いたことや、政府が10月からGo toトラベルに東京を加え、Go toイートなども開始したこと、などが考えられる。また、千葉県の飲食店情報の閲覧数が東京都などに比べ良好なのは、感染状況の違いを反映しているのだろう。


 なお、Go toキャンペーン要因については、10月からの開始ではあるが、9月半ばにGo toトラベルへの東京追加が決定されたことを受け、消費者の飲食や旅行に対する抵抗感がすでに9月後半から和らぎ始めた可能性がある。


 出遅れていた対面型サービスが、政府の後押しもあって持ち直しを明確化させつつあることは、日本経済にとって朗報である。課題は、冬場を迎え再び感染拡大の動きがみられる中で、そうしたサービス消費の持ち直し傾向が維持されるかどうか。感染防止と経済活動の両立という点で、当面正念場を迎えることとなり、国民全体として一層の工夫が求められるところだ。



(注)図表1の宿泊者数は、10月第3週以降未公表。

(出所)図表1、2ともにV-RESASのデータをもとに㈱ちばぎん総合研究所が作成

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