Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

東京オリ・パラの閉会を受けて

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年9月6日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 東京オリンピック・パラリンピックが9月5日をもって全ての日程を完了した。コロナ禍での開催のため賛否両論あったが、多様な意見があることは健全だと考える。個人的には、厳しい条件下でも国際的責務をしっかり果たす必要があること等から、開催賛成であり、終了した今、素晴らしいオリ・パラであったと思っている。


 コロナ感染を抑制する観点から多くの制約がある中で、選手・関係者にとっても観戦側にとっても最善のものとなるよう、努力が尽くされたと感じる。選手の多くが開催されたこと自体に感謝を示し、また、外国人選手はキャンプ地を含め日本のホスピタリティを高く評価していた。ブラジル・リオ市長の「日本人でなければ開催できなかった」との発言なども報じられた。幾つかの問題点はあったようだが、日本人の組織力や運営力には誇りを持って良いと思う。


 競技内容については、日本が史上最多のメダルを獲得したオリンピックも素晴らしかったが、日本開催で私も初めて多数観戦することができたパラリンピックにはそれ以上の感銘を受けた。もちろんオリ・パラに拘わらず競技者の苦労・努力は並大抵のものではないが、パラリンピックの場合、障がいに至る経緯や挫折、転機といったより複雑な人生経験が加わる。障がいや補助、ルールの内容も多様。それらを理解しながら観戦することは、オリンピックとは異なる魅力だ。


 パラ競技の迫力や技術の高さなどにも驚かされた。例えば、日本が銅メダルを獲得した車いすラグビーでは、激しくぶつかり合う姿をみて、思わず全身に力が入った。ラグビーW杯におけるラックやモール、タックルをみた際の反応と同じだ。銀メダルに輝いた車いすバスケットボールでは、通常のバスケよりパス・シュートが格段に難しいように思えたが、マジックのようなボール捌きに感動した。ボッチャの技術の高さも然り。走り幅跳びでは自己記録を70㎝更新して優勝する南アフリカ選手も出現し、補助器具を駆使した急躍進の可能性も醍醐味と感じた。


 千葉県では、千葉市(当社から近い幕張メッセ)と一宮町(釣ヶ先海岸)において、オリ4競技、パラ4競技が開催され、多くのメダル獲得にも繋がった。残念ながら無観客となったため、直接的な経済効果は小さく、内外の方々に千葉県の魅力を直接伝えることも叶わなかったが、立派に開催した事実と経験を、大会後のレガシー構築に繋げていくことが重要である。


 一宮町はサーフィンの聖地として、千葉市はパラスポーツの聖地として、関連スポーツ大会の開催を含め、地域の活性化に繋げていきたい。同時に、東京オリ・パラの理念である「多様性と共生社会の実現」といった考え方を、県全体にしっかり根付かせていくことも望まれる。パラの閉会式では、共生社会の促進に貢献する活動を行った学校として、千葉県の木更津、東金の2校が表彰されたが、素晴らしいの一言。コロナ禍でオリ・パラを開催した数少ない県として、課題も含めた様々な経験が必ず未来に活かされていくものと期待したい。

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