Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

千葉県の「マイクロツーリズム」には成長の余地

「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2020年7月9日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、「マイクロツーリズム」に注目が集まっている。県を超える移動は解禁されたが、まずは地元の観光を楽しみ、地元の観光産業を支えようという考えだ。


 「マイクロツーリズム」をデータで確認してみよう。観光庁の宿泊旅行統計調査を用いて、2019年の延べ宿泊者数に占める県内居住者の比率をみると(下表)、日本全体で18.7%と、外国人比率の19.4%とほぼ同水準。県別データでは、千葉県は13.9%と全国平均をかなり下回り、47都道府県中で下から10番目。また、千葉県民の県内延べ宿泊者数を県人口と比べると、それぞれ407万人、628万人となり、宿泊者数は人口の約6割にとどまる。全国の約9割と比較して、かなり小さい。


 県内比率の最低は京都府の7.6%、最高は北海道の35.6%。京都府は、外国人比率が39.1%と全国トップであることが主因だろう。一方の、北海道の県内比率の高さは、外国人比率の低さによるものではなく(むしろ23.8%と高め)、広い道内で道民が「マイクロツーリズム」を楽しんでいることが背景かもしれない。


 千葉県は、外国人比率も16.4%と全国平均を下回るため、その高さが県内比率の低さの要因ではない。首都圏などからの県外宿泊者に支えられ、県民は千葉県で宿泊しない形となっている。今後は、インバウンドの回復が暫く期待できないため、国内の宿泊需要を掘り起こしていく必要がある。その際、県外の方のみならず、県民に千葉県観光の魅力を今一度認識してもらい、観光産業の回復に繋げていってはどうか。交通インフラをはじめ様々な課題はあるが、県内比率が低い分、千葉県の「マイクロツーリズム」には成長の余地があると前向きに捉えたい。


 私も千葉県で働く者として、「マイクロツーリズム」を実践するため、この夏は、宿泊経験のない南房総を旅行するつもりである。もちろん、感染防止には細心の注意を払いつつ。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。