Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

個人消費の持ち直しにはバラツキ─乗用車販売に注目

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2020年8月5日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 景気は4~5月をボトムに取りあえず底打ちしたようだ。その主因は個人消費の持ち直しであるが、業態などによるバラツキが目立つのが特徴。


 ①消費の持ち直しはモノが主導しており、サービスはなお鈍い。利用可能な6月までのデータでみると(表1)、小売は前年比で-1.2%まで回復しており、中でも家電販売が+25.6%と、巣籠り消費を反映して大幅に増加。一方、サービスは、例えば外食売上が6月で-21.9%と、4月の-39.6%をボトムに持ち直してはいるが、依然としてパブ・居酒屋(-60.1%)を中心に弱い。


 ②モノの中では、乗用車販売が相対的に弱め。新車登録台数をみると(表2)、供給制約もあって5月に-50.0%まで落ち込んだあと、7月には-21.5%と持ち直してきてはいるが、他の小売業に比べると大きめのマイナス。


 乗用車販売は、2つの理由から注目している。一つは、高額な分、家計の所得期待に左右されやすく、その動向を点検できる材料となるためである。もう一つは、素材や部品など裾野が広く、製造業全体への波及効果が大きいためである。千葉県には、大手完成車メーカーはないが、鉄鋼や化学、電子部品など関連企業が少なくない。


 日本における今後の乗用車販売を占うために、海外での販売状況をみると、中国では5月に前年比プラスに転じ、米国でも7月には前年比-12.1%まで回復している。公共交通機関に比べ新型コロナへの感染リスクが小さいことも、乗用車需要回復の一因と指摘されている。日本でも、輸送機械の生産計画をみると、8月にはコロナ前の水準に近づくとされている点は明るい材料だ(図)。ただし、感染再拡大の中で、乗用車販売が持ち直しを続けるかどうか不確実性はなお高く、注意してみていく必要がある。

 

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