Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

最近の貸出・預金動向─春以降伸びが加速

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2020年8月12日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 11日に公表された日銀の貸出・預金動向(速報)によると、7月の前年比は貸出が+6.3%、預金は+8.3%とともに高い伸び(図1)。年初まで+2~3%を続けたあと、春以降に伸びを加速した姿だ。預金の主体別伸びを別の統計でみると、直近6月で、法人が+14.1%と大幅に増加したほか、個人も+4.9%と伸びを高めた(図2)。主な背景は次のとおり。


 ① 貸出の増加は、政府・日銀が春以降実施してきた資金繰り支援策も活用しつつ、民間金融機関が企業等の資金繰りをしっかりサポートしていることによるもの。


 ② 預金の増加は、企業が借入れた資金の多くを、預金として積み上げていることが主因。加えて、政府の給付金支払や企業・家計の支出抑制も、預金の押し上げに影響。


 比較のために、リーマンショック後の動きをみると、2008年9月ショック発生時の貸出+1.6%、預金+1.7%に対し、半年後の2009年3月にはそれぞれ+3.4%、+2.0%と、伸びの高まりは小幅。当時も積極的な金融・財政政策がとられたが、そもそも金融発のショックであり、金融仲介機能が十分には作用しなかった。その点、今回は金融仲介がしっかり機能。財政面でも、補正予算は一般会計で57.6兆円と、GDPの1割を超える既往最大規模の措置がとられている。


 個々の企業・家計によってバラツキはあるが、貸出・預金動向から判断する限り、全体としては、当面のセーフティネットが確保されている。このことは、経済の落ち込みの割に、倒産が総じて落ち着いていることにも表れている。1~7月平均でみて、今年は全国で684件、千葉県で20件と、昨年(685件、21件)と同程度にとどまる(東京商工リサーチ調べ)。


 今後の景気展開は、新型コロナの感染状況による面がなお大きいが、企業としては、資金面でのセーフティネットを活かしつつ、顧客ニーズの掘り起こしなど経営戦略面での工夫がより求められる局面となってこよう。

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