Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

新型コロナの感染再拡大の特徴と含意

「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2020年9月16日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 新型コロナ感染症は6月下旬以降に再拡大し、一日当りの新規感染者数は8月7日に1,595人まで増加した後、足もとでは500人前後に減少。この間の特徴は次のとおり。


 ①足もとの新規感染者数の減少は、春頃の広範な緊急事態宣言のような、経済に大きく影響する厳しい自粛要請が発出されない中で生じている。


 ②感染者数は春頃を大幅に上回って増加した一方、重症者数や死亡者数は相対的に落ち着いている。月次でみると(図表1)、感染者数は、今回ピークの8月には32,362人と、前回ピークであった4月12,013人の3倍弱。一方、死亡者数は、9月(14日までの月換算)で332人と5月586人の6割弱。


 ③首都圏(1都3県)とそれ以外に分けてみると、重症者数や死亡者数の落ち着きは、特に首都圏で目立っている(図表2)。


 以上の特徴に関し特筆すべきは、第1に、新規感染者数の減少が、政府主導というより、人々や企業が感染再拡大を眺め、感染しない・させないための基本的な動作を徹底したことによる面が大きいと考えられること。


 第2に、死亡者数の落ち着きが、検査拡大による感染の早期発見、軽症者の入院回避による医療体制の確保、重症化させないような治療面での進歩など、様々な工夫によるものと考えられること。特に首都圏での死亡者数の落ち着きには、春頃の医療逼迫時の経験が活かされている。


 ワクチンや特効薬の開発・浸透には、今しばらく時間がかかる。それまでに、感染拡大を抑制し医療崩壊を回避しながら、経済活動を回復させていくためには、コロナ禍での経験を蓄積し、それを活かした工夫を重ねていくしかない。上記の最近の動きは、約半年が経過する中での、国全体としての努力と進歩を示唆している。感染症の専門家からも、「感染防止と経済活動の両立は可能」といった発言が増えている。今後も、政府、医療関係者、企業、そして国民一人ひとりが、それぞれの役割を果たし、さらに進歩していくことが重要だ。

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